強く叱らず 注意手短に
Q 5歳の男の子です。友だちが作った物を壊したり、友だちから「嫌がっているのに、やめてくれなかった」と聞いたりします。理由を聞いてもはっきり答えません。親はどう対応すればよいでしょうか。
A これはかなり難しい質問です。いろいろな可能性があるため、「こうすればよい」という単一の答えはありません。一つだけ言えるのは、普通の「しつけ」ではなかなかうまくいかない、ということです。
本人に理由を聞いているのはとてもよいと思います。ただ、このお子さんのように理由を説明しないことも多く、そうなると推測するしかありません。
理由は何通りも考えられます。その中から可能性の高い理由を推測するためには、状況を細かく把握する必要があります。嫌がることをする場面や相手は決まっているか、いろいろな場面で不特定多数なのか。機嫌よく遊んでいる延長か、機嫌が悪くなったときにやるのか。相手が「イヤだ」「やめて」などと言っているか。言っていたら、その言葉を聞いてもやり続けるのか、それとも「やめて」と言われたらやめるのか。行動を止められたときにハッとしてやめるのか、止められて怒るのか、かえって、うれしそうにしているのか。
さらに、その子は褒められることがどの程度あるか、好きなことは何か。生活の中でストレスになるようなことがないか、など普段の状況に関する情報も子どものとる行動の理由を分析するためには欠かせません。
情報が少ないと、どうしても絞り込めないことがあります。その場合、取りあえず以下のように対応してください。まず、トラブル発生のリスクを減らすため、大人の目が届かない所で子どもたちだけで遊ぶ場面をなるべく減らしてください。遊んでいるときは、他の子が作った物や持っている物に手が届かない距離で遊び、子どもが手を出してもサッと防ぐことができるような位置に保護者がいるようにしてください。
もしお子さんが他の子の物を壊した場合などには、相手の子には保護者から謝ります。お子さんにはその場で手短に注意し、少し離れた場所で過ごすようにしてください。強く叱っても効果はありません。逆に強く叱ることで、次回からも同様の行動が出現しやすくなることがあるので、手短に注意する程度にしてください。
対応が難しいことが多いので、このご質問のような状態が4歳を過ぎても続く場合、発達相談などに行かれることをお勧めします。
(本田秀夫・信州大医学部子どものこころの発達医学教室教授)
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